ばうわうひひーん

テキストで吠える

はじめましてよりお久しぶりの方へ。『アイドルマスター スターリットシーズン』 感想・レビュー。

 

 

 

 

アイドルマスター スターリットシーズン」をクリアしたので感想を述べたい。

前置き

 長く続いているシリーズなので色々と語りたいことはあるが、大前提としてアイドルマスターの名を冠したゲームが面白かったことは私の知る限りただの一度もない。少なくとも私は面白いと思ったことはない。今作、スタマスもそうだ。ではなぜそのようなタイトルの新作が出たのか。私が購入に踏み切り、クリアまで持ち込んだのか。それはゲーム性とかはどうでもよく、推しのアイドルと触れ合える唯一無二の存在であることにほかならない。

 

 題材としてアイドルを扱った作品は他にもある。戦国時代とも称される現在。それでもアイドルマスターはキャラ、モデリング、曲、演出、どれもとっても群を抜いているように思う。十余年も前に戦端を切り開き、古強者のプロデューサーたちを生み出した功績は大きい。

 

 スタマスはゲームとしては正直つまらない、退屈な部類だ。しかし歴史に裏打ちされた我々のアイドルはここにしか存在しない。

 

アイマス遍歴

 今作について語る前に、私のアイマス遍歴について記しておく。


 最初、彼女らと出会ったのはゲームセンターだった。当時、格闘ゲームに血道を上げていた私だが、特異な筐体が入荷されて強い興味を抱いた。アイドルを育成するとはなんて面白そうなんだと思ったが、金がいくらあっても足りないという声を聞き、プレイすることはなかった。

 

 初めてプレイしたのは箱版だった。ここで追加された星井美希に「ハニー」と呼ばれたことに強い衝撃を感じた。
 そこからSPやモバイルでのエリアゲームを楽しみ、ゼノグラシアに驚き、思春期を迎えた真美に心を奪われてアイドルマスター2をプレイし、2011年版のアニメを視聴し、各種ソシャゲにも手を出した。スタドリに塗れた。ライブのDVDもいくつか購入し、何度も見返した。

 ただ、ここで途切れた。
 私は真美のPなので、主流はASのアイドルであり、ソシャゲはあくまで派生作品としか見ていなかったのだが、いつしかそちらに流れがいったような気がして、アイドルマスターからは自然と離れていった。
 2以後に発売された「プラチナスターズ」と「ステラステージ」の評価が芳しくなかったこともあり、据え置きのアイマスには十年も触れていなかった。


 スタマスは特異な作品である。人によってはアイドルマスターだが、アイドルマスターではない。歪に枝が絡み合った大樹のようなものだ。
 なんじゃそらという話だが、プロデューサーと一口に言ってもその実態は奇々怪々としている。私のようにいわゆる無印から765プロのアイドルを知ったものもいれば、ニコニコ動画から、アニメから、ソシャゲから、あるいは別の媒体から入ったものもいる。今作が複数の事務所から成るアイドルユニットをテーマにしているのだから「俺の推しを目立たせろ」「この子はこんなんじゃない」「そもそも出演してねえ」といった声が上がるのは火を見るより明らかだったはずだ。

 

 一周目をクリアした段階での所感だが、今作もやはり、主役はASだった。
 後輩や新たな同輩を得た春香たちが成長した姿を見られ、新たな関係性を構築している様を見られた。346や283プロ推しのプロデューサー諸兄にとっては食い足りなさを覚えても仕方のないところだと思う。

 とはいえ、アイマスから離れていた私にはちょうどよかった。ASキャラがおり、他事務所のキャラも知っていたので何ら不都合なくスタマスをプレイすることができた。恐らくだが、最前線でPとして活動していたのなら今作をプレイしなかった、かもしれない。

 

テンポ テンポ 俺のテンポじゃない!

 肝心のゲーム内容だが、特に変わらない。ゲームとしては今までの据え置きシリーズとほとんど同じである。
 挨拶してレッスンしてライブしてファンを増やして目標を達成して~の繰り返しだ。

 最初に触って思ったのは「思ってたんと違う」である。
 求めていたのは女子校ではなく、マンツーマンの個別塾だ。もっと二人三脚感がほしかったんだなあと、改めて思った。

 

 今作は3月から12月までの10ヶ月をスターリットシーズンと称し、ルミナスというユニットを組み、大目標であるライブに出るぞというお話。そう。マジでやることは特に変わらないのだ。しかし変わるものはある。現代社会に生きる私にとってはテンポの悪さが目立ち、プレイするぞという気勢を削ぎに削ぎまくってくれた。


 まず頭を抱えたのはストーリー、というか会話のテンポである。
 メインストーリーの軸となるのは今作から登場し、ルミナスに加入する「心白」。彼女のライバルである「亜夜」の二人だ。この二人には確執があり、修復があり、分かりやすい流れでそこはいい。新参のキャラがメインかよとも思ったが、なにせ29名プラスアルファのアイドルたちがいるのだ。中心にいるのはまっさらで真っ白なキャラクターがいい。心白というアイドルと対することによって他のアイドルたちがどのように動き、思って、どう見えるのか。新たな関係性が生まれることは想像に難くない。

 ただし29人いる。

 一度に全員が喋るわけではないが、まあ、いちいち一人ずつリアクションがあって、一人分のセリフを複数人で分け合って喋って、ちょろちょろ画面も動く。学芸会じみている。
 もちろん全員をある程度平等に扱う必要はあるだろう。それは理解している。しかし頭では分かっていても体が拒否反応を示した。アイマスのキャラクターは素晴らしくいい子たちばかりだ。だからこそ予定調和的で面白くはない。タイプが似ているキャラもいるし。無論、もっとギスれというわけではない。私を含め、多くのプロデューサーはそのようなものをアイマスに求めていない。

 なもんで当たり前だが、ストーリーに関しては新キャラに興味がないとのめり込めないだろう。


 会話の次にやる気を削いでくれたのがレッスンだ。
 年寄りのリハビリにも幼児の知育にもならないようなものをやらされる。こんなんなら操作させないで数字が増えたという結果だけを見せてほしかった。


 ライブもいつもの、である。音ゲーではなく、ちょっとしたリズムゲームをやらされる。久しぶりにやったら画面がごちゃっとしていて見づらくて仕方なかった。派手な演出で輪っかが見えにくいんだよ!


 チュートリアルらしき展開が終わって、すでに数時間が経過していた。私はゾッとした。えっ、マジでこれ12月まで……あと10ヶ月もやんの? 何年かかるんだよ。私はアプリケーションを終了した。

 

高難度と不親切は違う

 今作の評価を下げる理由の一つに難易度が高いという意見を耳にしたが、それは少し違うような気がする。ただただ不親切なだけだ。ゲームデザインとしては本当に終わってると言ってもいい。


 各メニューの行き来がしにくい操作性の悪さ(特にスキルボード関連)、画面の見づらさ、テンポの劣悪さ、ライブに重要なスキルへの導線の乏しさや、そもそもライブ中にごちゃごちゃ操作させ過ぎな煩雑さ……ああ、枚挙にいとまがない。

 

 プロローグに数時間かかる時点で令和のゲームとして失格の烙印を押されても仕方がない。そのようなタイトルであるからして細かな詰めの甘さが散見するのは当然である。それらを飲み込んだ我々Pに襲いかかるのはメンバー制限という高い壁というか、どうしようもない穴だ。

 

 今作は1ヶ月毎に目標となるライブが存在する。これをクリアしないと先に進めずゲームオーバーだ。私なら「よし、センターは真美で行くぞ! というか真美のソロでいいです」と行きたいところだがそうは問屋が卸さない。月ごとに曲とメンバーが決められており、プロデューサーはその中からユニットを選出する必要に駆られるのだ。
 つまり、人によっては全く興味のないアイドルを育成しなければならないし、ライブでスコアを伸ばすためにコミュをクリアして思い出ボムを集め、スキルボードを埋めなければならない。ええ……?


 今作には自由がない。
 みんなを活躍させなくてはいけないという大所帯であるがゆえのストーリー。歌唱メンバーというのは苦肉の策だ。それに合致させるというか辻褄を合わせるためのシステムの弊害である。メンバーを好きに選べないこともそうだが、スケジュールも決められている。たとえばパラメータが足りないからこの週はレッスンしまくるぞとか、ファン数稼ぎたいからステージばっかりやりたいと思っても、無理だ。それはできない。月曜日はレッスン。火曜日は営業。水曜日はレッスン。木曜日は平日ステージです。それ以外は何もできんぞ触れんぞと一切の容赦も余地もない。
 ということはレッスンの回数も決められている。全員をまんべんなく育てることは困難というか不可能だ。


 先へ進むためにプロデューサーは苦渋の決断を迫られる。レッスンも、コミュも、無制限にはできない。
 攻略に必要なものは間引きだ。切り捨てなくてはならない。しかし、そもそも誰を育成すればいいのかも判然としない。とりあえずで選んだメンバー、選択肢一つもミスできない。コミュは常にパーフェクトを取らなければ攻略が遅れてしまうからだ。序盤は常にカツカツだ。マニーもない。足りているものは一つもない。衣装を売ってくれる店もあるが、そんなことよりステを伸ばせる種と行動回数を増やせるドリンクだ。


 そしてどこかで詰まる。
 メンバーの育成が足りなかったか。スキルを理解していなかったか。ユニゾンのタイミングをミスしたか。あるいは――――いったい、どこで間違ったのか。
 ゲームオーバーすると救済措置として時間を巻き戻せるが、どこまで戻せばいいのか。というか、戻してやり直したところでクリアできるか判断がつかないと思う。
 やり直し、細かいセーブアンドロードを要求するくせに絶望的なテンポの悪さがプレイヤーのリトライ・リプレイを邪魔するというマジもんの悪魔ですよ。そも、アイドルときゃっきゃしたいだけの層にこういうのはあんまりだ。事前に攻略情報を仕入れていないと無理だろこれ。そう感じた。


 ちなみにだが、私は仕入れた。プロローグを終えたあと、その後のプレイを一度断念し、それでもクリアだけはしなくてはと一念発起した。絶対ゲームオーバーしたくねえと攻略を見て、自分なりに逆算して、何月に誰をレッスンするか、誰のコミュを踏むか、などとローテを組んだ。ぶっちゃけここ考えてるときが楽しかった。
 これを攻略サイトノールックの1発クリアできるPは少ないと思う。そも、最初のライブを突破しているのもトロフィー取得率からして6割程度だった。この手のキャラゲーでそんなんある? ガスコインじゃないんだぞ。

 

ナンバーワンではなくオンリーワン

 だめなところばかり書き連ねてしまったが、いいところももちろんある。それは主にグラフィックの進化であり、強化されたステージの演出だ。
 キャラクターは新たなエンジンとレンダリング技術によって十年前より細かく動き、表情もより豊かになった(モデリング自体は前作・前前作である程度完成していたそうな。私は2以来なので新鮮味があった)。ライブで汗をかくアイドルは確かに生きている。単推しには厳しいかもしれないが、それでも今作のコミュはそれなりに分厚い。十分に楽しめるはずだ。

 

 成長したASメンバー。平面でしか見られなかった各事務所のアイドルたちが生き生きと動く姿。脇を固める社長、事務員たち。これこそアイマスなんだよなあとか懐かしさすら覚える。やっぱり真美なんだよなあ、そこはよかった。もちろん他のアイドルも可愛かった。

 

 なんだかもう、ゲームがクソとかUIがクソとかそんなもんどうでもいいんだよという潔ささえ感じられる。そこのみにて光輝く、そういう一点での突破にかけてきたのか。

 でも季節が変わっても私服が同じなのはどうなんだ。響、寒くないのかその格好。
 小物系がなくなってたりと細かいところには不満あり。


 新曲も素晴らしかった。
「SESSION!」の馴染み具合はやばい。聴いてて新曲と思わなかった。いわゆるつかみとしてはバッチリで、続く「夏のBang!!」も「アイシテの呪縛」も素晴らしかった。だからこそもっと色んなキャラに、というか全員に歌ってほしかったなあというのはある。

 

乗り越えた先に見えるもの

 今作はアイドルマスターというガワを被っていなければ後悔の怨嗟とともに中古屋に売り払われてしまうであろう逸品である。実際私はそうしかけたし、プレイ中も文句を言いつつやっていた。ぶっちゃけ悪いところはまだ書き足りないくらい。テンポの悪さを早送りとスキップで補いつつ。しかし、気づけば春が過ぎ、夏を越え、秋を迎えていた。

 コミュをクリアすると事務所にものが増える。アイドルたちとの触れ合いの中で手に入れたぬいぐるみや楽譜、ソファやカップ麺の山など。少しずつこの空間に愛着がわき始める。いつしか、ルミナスのプロデューサーとしてこの世界に埋没しているという感覚があった。

 そうして永遠に続くかとも思えたプロデュース業の最後の最後、12月31日に待ち受けているのは私のような邪悪な心を浄化する圧倒的な光の演出である。ぶっちゃけライブだったらウマ娘のが上じゃねえのとか思ってたけど、やっぱ本家は違うわ。ラストだけである程度のマイナス点を吹っ飛ばせる出来だった。これを見るためにスタマスをプレイしていたのだ、私は。


まとめ


 いつものアイドルマスターでした。ただ、ボリュームはアップし、ビジュアルと演出もパワーが増している。駆け足のつもりでしたが、クリア時間は35,6時間はかかってましたね。ノースキップだと倍以上はかかるのか。すごいっすね。
 今はもう私の知るアイドルマスターという世界ではなく、ぐっと多様に広がっているみたいで。今作をおすすめできるのは私のように満遍なく色んなキャラを知っていたアイマスおじさんで、単独のアイドルが好きというより、全部ひっくるめたアイマスの世界観が好き、という人になると思う。

 

余談
 ぶっちゃけASオンリー、あるいはメイン扱いってのはもうないだろうと思う。彼女らは成長してしまったし、やっぱり何がとは言わないが「老けたな」と思う。違和感を覚える瞬間もある。私が歳をとったのだ。彼女らもそうだ。不動のセンター感のある春香を見て、なんとなく寂しさも覚えた。
 だから、今度は違う事務所の、後輩であるアイドルたちがメインとなるべきだと思う。というか次回作は埼玉勢を出してくださいお願いします。ギャルユニット組ませてください。

 

 文句言いつつクリアしましたが、実は2周目からが本番です。
 メンバー制限は解除され、強くてニューゲーム状態。これでやっとセンター真美を連打できます。ライバルユニットのアイドルもプロデュースできるらしく、エンディングも分岐する感じ、なんですかね? お楽しみのコミュ関連も自由に閲覧できるし、衣装もクライマックスアピールもコンプしたいですね。かくいう私はDLCをいくつか買って2周目に突入しております。S4Uもありますし、ゲームプレイ中はステージをちゃんと見られませんからね。今度はゆっくり楽しもうと思います。